【完】キミさえいれば、なにもいらない。
それを聞いて、やっぱり彼はどこへ行ってもモテるんだなぁと感心してしまう。


そしたら彼方くんが急に、私のことを上から下までじーっと見つめてきて。


いきなりどうしたんだろう、なんて思ってたら、彼は頬をほんのり赤く染めたかと思うと、口元に手を当てながら呟いた。


「っていうか、やばい……。想像以上なんだけど。雪菜の浴衣姿」


「えっ?」


「可愛すぎて、直視できない」


思いがけないことを言われ、かぁっと顔が熱くなる。


「な、何言ってるのっ……。それは褒めすぎだよ」


私が照れながら謙遜すると、彼方くんが感激したように言う。


「いや、マジでそう思ってる。ほんとに着てきてくれたんだ。嬉しい」


「だって、約束したから……」


「ありがと」


嬉しそうに笑う彼を見て、なんだかわけもなくドキドキしてしまう。


こんなに喜んでもらえるなんて、思わなかったな。


「それじゃ、行こっか」


彼方くんがそう言って、ゆっくりと歩きだす。


私はそれについて自分も歩き出した。


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