【完】キミさえいれば、なにもいらない。
「うわ、すっげぇ人」


「ほ、ほんとだね……」


お祭りの屋台が並ぶメインの大通りまでやってくると、駅前よりもさらに人がいっぱいで、かなり混雑していた。


家族連れからカップルまで、たくさんの人でにぎわっている様子。


はぐれてしまわないように気を付けながら、彼方くんの隣を歩く。


道路の両脇には、わたあめにクレープ、焼きそばやフランクフルトなど、いろんな食べ物の屋台があって、前を通るたびいい匂いが漂ってくる。


キョロキョロしながら歩いていたら、彼方くんがふいにこちらを向き、声をかけてきた。


「雪菜は何か食べたいのある?」


「えっ。うーん……私は、なんでもいいよ」


こういう時、「なんでもいい」って答えるのはよくないのかもしれないけど、正直なところ慣れないデートという状況に緊張しているせいか、あまりお腹がすかない。


男の子とお祭りに行くの自体初めてだから、どうしていいかもわからなくて。


そしたらそんな私の気持ちを読み取ったかのように、彼方くんがフッと優しく微笑んで。


「あ、でもまだそんなにお腹すいてないか。それじゃ、先に射的とかのゲームで遊ぼっか」


なんて提案してくれたので、私はコクリと頷いた。



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