【完】キミさえいれば、なにもいらない。
「おぉ、圭介!それにみんなも!」


彼方くんが明るく声をかけ、彼らのほうへと駆け寄っていく。


すると、先ほど大声で叫んでいた圭介くんという人が、ニヤニヤしながら彼方くんを軽く小突いた。


「おいおい~、なんだよお前、『先約がある』とか言うから何かと思ったら、ちゃっかり女子とデートしてんじゃねぇかよ!」


冷やかすように言われて、ちょっと照れたような顔で笑う彼方くん。


「はは、わりぃわりぃ」


「このモテ男が!聞いてねぇぞ。いつのまに女できたんだよ」


「いや、まだそういうのじゃねぇよ」


「ウソつけ~!」


そんなやり取りをしている二人のすぐ後ろで、ポカンと口をあけながら突っ立っている鈴森さん。


彼女は浴衣姿でメイクもバッチリ決めて、相変わらずとても可愛いけれど、その表情はひどくショックを受けているような感じで。


私と彼方くんが一緒にいたのが信じられないとでもいった様子。


それを見て、私はますます気まずい気持ちになってしまった。


どうしよう。なんだかこの場に居づらい……。


彼方くんと付き合っているわけでもないから、なんとなくうしろめたいし。



< 255 / 370 >

この作品をシェア

pagetop