【完】キミさえいれば、なにもいらない。
「ねぇ、離してっ」


男たちにグイグイと手を引っ張られながら、今さらのように彼のそばを離れたことを後悔する私。


すると、その時急に後ろから、誰かにガシッと首元を捕まえられた。


「何やってんだ!離せよっ!」


えっ……?


聞き覚えのあるその声にドキッとして振り返ると、そこにいたのは、まさかの彼方くんで。


その姿を見た瞬間、心の底からホッとしてしまった。


「彼方くんっ……」


しかも彼、額には汗をかいていて、息も少し切れているみたい。


もしかして、私のことを必死で探してくれたのかな?


「は?誰だよお前」


ナンパ男はそこでようやく私の手を離したかと思うと、彼方くんを睨みつけながら問いかける。


すると彼方くんは、そのまま片腕で私の体を自分のほうに抱きよせると、男を睨み返しながらこう言った。


「この子の彼氏だよ!人の大事な彼女に触んな!」



< 258 / 370 >

この作品をシェア

pagetop