【完】キミさえいれば、なにもいらない。
胸の奥がちょっぴり苦しいような、それでいてくすぐったいような、なんともいえない気持ちになる。


「いや、べつに、知ってるだなんて……。そんなことないよっ」


誤解されないようにと私が再び否定したら、彼方くんはふぅっと軽くため息をついたかと思うと、こちらをじっと見つめてきた。


「バカだよな、俺。雪菜とは、こうやって一緒にいられるだけでもじゅうぶんなはずなのに。最近どんどん欲張りになってる気がする」


そう言って、ちょっぴり切なそうな顔で笑う彼。


「雪菜の時間を、俺が独り占めできたらいいのに」


「……っ」


相変わらずストレートすぎる彼の発言に、なんて返していいのかわからなくなる。


だけど、内心ものすごくドキドキしている自分がいた。


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