【完】キミさえいれば、なにもいらない。
その勢いでバランスを崩した私は、後ろに倒れる。一瞬体が宙に浮いたような感覚になって。


あ、落ちる……。そう思った時には、もう遅かった。


無意識のうちにギュッと目をつぶる私。


すると同時にどこからか「雪菜!」と大声で私の名前を呼ぶ声が聞こえて。


瞬時に誰かにうしろから抱きとめられ、両腕で体を包み込まれた。


そしてそのまま強い衝撃と共に床に倒れ込んだような気がしたけれど、まるで痛みを感じない。


なんだろう。一体何が起きたんだろう。


恐る恐る目を開け、顔を上げる私。


そしたらそこで、私の下敷きになっていたのはなんと……。


「り、陸斗先輩!」


先ほど会ったばかりの彼だった。



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