【完】キミさえいれば、なにもいらない。
陸斗先輩は私を腕に閉じ込めたまま、一瞬苦しそうに顔を歪ませたかと思うと、次の瞬間そっと目を開ける。


「……はぁ、ビックリした。大丈夫か?」


その様子からして、とりあえず彼は無事みたいだけれど、心配になる。


まさか先輩が、私をかばってくれるなんて。


「だ、大丈夫……。助けてくれてありがとう。あの、先輩こそ大丈夫なの?」


私が尋ねると、フッと優しく笑う先輩。


「はは、このくらい俺は全然大丈夫だよ。それよりも、雪菜が無事でよかった」


その笑顔を見て、不覚にも少しだけドキッとしてしまう。


笑った顔は昔と変わらない。私が彼を好きだった頃と。


だけど、この優しさを信用してはいけないってことは、私はよくわかっているつもりだ。


それに、彼に対して今はもう恋愛感情なんてないし。


私が起き上がり、陸斗先輩から身を離そうとしたら、ふいに彼が私の腕をギュッと掴んでくる。


「相変わらず細いよなー。折れそうな腕してる。ちゃんと飯食ってるか?」


「た、食べてるよっ」


「色も真っ白だし、なんか守ってあげたくなるんだよな、雪菜って」



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