【完】キミさえいれば、なにもいらない。
その後、自分の担当するシフト時間の仕事を無事終えた私は、メイド服から制服に着替えるために教室を出て更衣室へと向かった。


もちろん、着替えないでずっと衣装のままでいてもOKなんだけど、さすがにあんな格好で校内をうろつくのは恥ずかしくて。


璃子はシフトが終わるなりすぐに、お客として来てくれていたバイト先の先輩に会いにチャイナドレス姿のまま行ってしまった。


これから二人で一緒に学祭を見てまわるみたい。


うまくいってるみたいで良かったなぁ。そのうち付き合ったりするのかな。


そんなことを考えながら廊下を歩いていたら、ふと、向こう側から見覚えのある小柄な女の子が歩いてくるのが見えて。


よく見るとそれは、あの彼方くんの幼なじみの鈴森さんだった。


あっ……。


うっかり目が合ってしまい、何とも言えない気まずい気持ちになる。


どうしよう。


するとそこで、私がそっと目をそらそうとしたら、鈴森さんに名前を呼ばれて。


「ねぇ、市ノ瀬さん」


驚いて再び目を合わせたら、鈴森さんが怖い顔で私を睨みながら腕を掴んできた。


「……ちょっといい?話があるんだけど」


「えっ……」



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