【完】キミさえいれば、なにもいらない。
そう言われて、ドクンと心臓が跳ねる。


なんだろう、話って。


正直すごく嫌な予感がしたけれど、無視するわけにもいかないので、言われるがまま彼女についていった。


二人で誰もいない空き教室に入り、向かい合う。


すると、鈴森さんが腕を組んでムスッとした顔のまま私に問いかけてきた。


「ねぇ、どうして最近彼方のこと避けてるの?」


思いがけない質問にビックリする。


確かに私は最近あからさまに彼方くんのことを避けていたし、それはいつも彼と一緒にいる彼女にも感づかれていたのかもしれないけれど、そのことでこんなふうに呼び出されるとは思ってもみなかった。


だって、鈴森さんは以前私に彼方くんのことは本気にするなって、勘違いするなって言った。


だから、私が彼を避けたところで、彼女にとってはむしろ都合がいいことのように思えるのに、どうしてなんだろう。


それに、彼女はなぜかすごく怒っているように見える。


それがなぜなのか私にはわからなかった。


「ねぇ、何があったの?黙ってないで何か言いなよ」


彼女は少し強めの口調で詰め寄ってくる。


私は、なんて答えようか少し迷ったけれど、ここで彼女にウソを言ったりごまかしたりするのも良くないような気がしたので、言える範囲で正直に答えることにした。


それに、彼女はおそらく彼方くんの本性を知っているはずだし。



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