【完】キミさえいれば、なにもいらない。
思いもよらない彼女のセリフに、返す言葉を失う私。


ウ、ウソでしょ。そんな……。


鈴森さんの目には涙がにじんでいて、それを見たら、彼女が本気で彼方くんのことを好きなんだということが伝わってきて、思わず胸がギュッと締め付けられた。


それにしても、信じられない。まさか、彼女が実はこんなふうに思っていただなんて……。


「なんで今さら避けたりするの?何で信じてあげられないの?ほんとは自分だって彼方のこと好きなくせに、何逃げてんの!?」


「……っ」


鈴森さんの言葉が、胸にグサッと突き刺さる。


私は何も言い返せない。


「あれだけ彼方があなたのこと思ってるのに、その気持ちがわからないんだったら、そのままずっと一人でいればいいよ!バカ女っ!」


彼女は泣きながら大声でそう言い放つと、そのまま勢いよく教室を出ていってしまった。


取り残された私は、呆然とその場に立ち尽くす。


ど、どういうこと……?


なんだかもうわけがわからない。


鈴森さんは、彼方くんが本気だと思ってたって……。


じゃあ、あの時の彼方くんの発言はなんだったの?あれが彼の本性なんじゃないの?


もう何が本当なのか、わからなくなってくる。混乱してくる。


だけど今の、鈴森さんの言葉で気が付いた。


私は、結局逃げてるんだ。自分の気持ちから――。



< 327 / 370 >

この作品をシェア

pagetop