【完】キミさえいれば、なにもいらない。
『ほんとは自分だって彼方のこと好きなくせに、何逃げてんの!?』


そう。彼女の言うとおりだ。


私はずっと、自分の気持ちとも、彼の気持ちとも向き合うのが怖くて、逃げてばかりだった。


彼方くんのことが好きだってハッキリと認めるのが、怖くて。


彼方くんにも本当のことが聞けなくて、何も言わず一方的に彼を避けたりして。


それも全部、あの時みたいに恋をしてボロボロに傷つくのが怖かったから……。


だけど今、鈴森さんに言われて、自分の気持ちをあらためて自覚してしまった。


ずっと気づかないふりしてたけど、ほんとは私……彼方くんのことが好きなんだ。


いつのまにか好きになってたんだ。


だからこんなにも苦しくて、彼の本音を聞くのが怖いんだ。


でもだからって、ずっとこのまま逃げてばかりなんて、そんなのよくないよね……。


勇気を出して、彼に本当のことを聞いてみたほうがいいのかな。


自分の気持ちをちゃんとぶつけてみたほうがいいのかな。


それでもし、再びボロボロに傷ついたとしても、このまま逃げ続けるよりはマシなのかな……。



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