【完】キミさえいれば、なにもいらない。
言われて先ほど彼方くんからもらった劇のビラを確認してみる。


すると確かにそこには『王子の初恋』と書かれていて、出演者の名前も一部掲載されていた。


題名からしておとぎ話みたいなのを想像してしまったけれど、一体どんな劇なんだろう。


それに、何よりもさっきの彼の言葉が気になって。なんだかずっとソワソワして落ち着かない。


「楽しみだねぇ。あ、そろそろ始まる時間だよ」


そこで璃子が嬉しそうに声を上げると同時に、体育館の照明が少し暗くなる。


そして、幕が閉まったステージの端から、司会者がマイクを持って現れた。


「どうも、みなさんこんにちは!お待たせしました!今から2年1組の演劇『王子の初恋』が始まります!上演中は私語を謹んで、静かに鑑賞してくださいねー!」


声が大きくテンション高めの司会者が、劇の案内や鑑賞についての注意を語り出すと、だんだんとざわついた館内が静かになる。


そして、ナレーターの語りと同時にとうとう劇が始まった。


ステージの幕が開くと、王子様姿の彼方くんが現れ、会場内にキャーキャーと歓声が沸き起こる。


「キャー!彼方くん!」


「カッコいい~!!」


彼は王子の衣装がとても似合っていて、その姿はどこから見ても本物の王子様にしか見えなかった。


スポットライトが似合う人とは、こういう人のことを言うんだろう。


ステージの上の彼がまぶしすぎて、なんだか今は少し遠くに感じてしまう。



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