【完】キミさえいれば、なにもいらない。
彼方くんがそう言って、手を繋いだまま私のほうを振り向き、立ち止まる。


「でも、大丈夫。俺は絶対裏切らないよ。何があっても」


ギュッと手を強く握られて、じっと目を見つめられて。


「今までの悪い思い出も全部、俺が塗り替えるから。雪菜のこと、幸せでいっぱいにするよ」


「……っ」


「約束する」


そんなふうに言われたら、嬉しくて思わず涙が出そうになった。


「ありがとう……」


そう言って彼の手を強く握り返す。


彼方くんは、やっぱりすごい。私が欲しい言葉を全部くれる人。


この人なら信じられるって、そう思わせてくれる人だ。


彼のことを好きになってよかったと、心からそう思う。


彼方くんに出会えて、本当に良かった。初めて付き合ったのがこの人で本当に良かった。


私、今度こそ、幸せな恋をしよう。


もう自分を、あきらめたりしない。幸せになることから逃げたりなんてしないから。


あなたとならきっと、大丈夫――。



*fin.*



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