【完】キミさえいれば、なにもいらない。
なんて、いきなり話しかけてきたかと思えば、すぐまたその場を去っていく璃子。
彼女はいつもこんなふうに絶えず動き回っていて、おしゃべりで、テンションが高い。
たまにその話についていけなくなる時もあるけど、私はあまり自分から話すほうじゃないから、よく話す彼女といると楽しいし、元気が出る。
お互い全然タイプが違うけど、だからこそ、足りないところを補い合っているような関係だと思う。
「っていうか、聞いてよ雪菜。昨日『恋するふたり』の映画観に行ってきたんだけどね」
化学の授業の用意を持って、璃子と並んで理科室に向かって歩いていたら、彼女がまた楽しそうに語り出した。
「え、うそっ。もう観たの?公開されたばかりだよね。どうだった?」
「超よかったよ~!胸キュン半端ない!なんと言っても朝川リョウくんがイケメンすぎてやばいんだって!絶対観たほうがいいよ」
「へぇ、そうなんだ。そんなに胸キュンなんだね」