【完】キミさえいれば、なにもいらない。
璃子の言葉にギョッとする。


でも、さすがにそれはないと思う。好きなんて、そんなことあるわけがない。


「ほら、この前のあの殴られた事件。あれをきっかけに雪菜に惚れちゃったんだよ~」


「いや、そんなの絶対にありえないって!からかってるだけだよ」


私が全力で否定すると、璃子は笑いながら私の肩をポンと叩いて。


「いやいや~、絶対そうだって!よかったね~、雪菜にも恋のチャンスが到来だねっ!」


まるで私の言うことを聞いてない。むしろ、面白がってる。


そして璃子はそのまま「それじゃまたあとで!」と一言告げると、さっさと自分の席へと戻っていった。


困った顔で、ふぅ、とため息をつく私。


まったく、璃子ったら……。


呆れながらもカバンから教科書を取り出し、引き出しの中にしまおうとする。


……あれ?


< 91 / 370 >

この作品をシェア

pagetop