黒犬
〜〜〜

〜SIDE 和成





「誰だ…」


低い声
こいつが天童の言ってた犬か
こわいこわい…
近付いたら噛みつかれそうだ


「どーもー。
総丘 和成って言います。」


明るく言って見たが犬はまだ牙を剥いていた


ダメか…。
「何をそんなにピリピリしているの?」







「ぁあ″?」






上体を起こして額がひっつくほど近くで低いうなり声をあげられる
こういう時は確か…
胸の前に手を置いて…
何もしなければ噛まれないはず……
「よしよし。
落ち着いて…
傷が開くよ」
かれを布団に寝かせる







静かな声を出して様子を見る
「何か不安?」


かれは何も言わない
「不安だよねー
あんな奴のペットなんて…」



















「でもあいつ悪い奴じゃないよ…
ただちょっと不器用なだけ…
うんん
ちょっとじゃないね…」



自分で話してておかしくなってきた



「あいつは何とも思ってない奴を助けたりしないし
殴ったりもしない…」
















悔しいけど
「漣 愛兎は君を愛してると思う…
何でかはわからないけどね…







私はね思うんだ…
一回心を許してみればいい
それでもどうしても好きになれなかったら
どうしても許すことができなかった
もう一度牙を剥いて喉を噛み切って逃げればいい…






一度だけ…
一度だけでいいんだ







少しだけ







漣 愛兎をじっくり見てごらん…


まあ…
その判断も全部君が決めればいい…」


にこりと笑って部屋を出…



「おい…」



「なーにー?」



「お前うざいな…」



「うん
よく言われる…」



バイバイと手を振って部屋を出た
かれは窓の外を見ていた



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