黒犬
なんだよあいつら……
目を瞑った。
〜〜〜
朝飯の香り
瞼を上げた
「あら、おはよ。」
初めて見る顔だ
女…
「起きたか…」
あの鬼も一緒だ
「飯だ。
食え。」
お粥
漬物
いつの時代だよ…
「嫌だ。」
こんなの食べたくない
「あらあら…
ダメよ………
好き嫌いは。」
「紗智栞
外してくれ…
今日は2人で食べる。」
「はいはい。
怪我人だから
無茶させないのよ。」
なんだよ…
また暴力か…
「食べろ俊…」
「食べない…」
「私の妻の作ったものが食べられないのか?」
男の顔が曇った
「いらねえ。」
「食べなきゃ…
治んねえぞ……」
スプーンが口元に近づいてくる
「頼む
食べてくれ…」
……
なんで……
そんな顔…
一口…
一口だけ食べてやるか…
ぱくっ
……
…
は?
うま…
何だこれ
出汁の効いたスープ
じゃこの塩分もちょうどいい
青菜のちょっとした苦味もマッチしている
男から丼とスプーンを奪いそれを平らげた
男はニヤニヤとこちらを見ていた
「いい子だ。」
頭を撫でられた
大きな手は温かくてどこか安心した
「触るな。」
手を払う
彼は怒ったりしなかった
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