黒犬




はぁぁあああー?


何だこれ。















「じゃあ俊平くん。
これお願いね〜。」

洗濯物を持って外へ行った紗智栞さん




一升以上ある米
これをとぐっていう初仕事
「なんだよこれぇぇええええ。」















「うるせえ。
黙ってといでろ。」

鬼の監視もある。
「仕事ってこんなんかよ。」


















男はふっと笑った
「飼い犬に危険なことはさせないよ。
強くはなってもらうけどね。

それに…
怪我まだ治ってないからね。」
















「あと1ヶ月は紗智栞の手伝いだ。
しっかり働けよ。
私はちょっと出てくる。」

何時もは和装なのに今日は変なスーツ
似合わねえ…
くっ
「なんか失礼なこと考えてねえか。」
ジロリと睨まれた
「……」




「行ってくる。」

紗智栞さんにそう言って去る男の背中を見ていた




「何見てるの。
手止まってるわよ〜。」




彼女に言われて急いで米を研ぐ

ーガシッガシッ

「俊平君はお米研いだことないの?」

力任せに研いでいたら手を握られた

「そんなに力任せじゃお米が粉々になっちゃう。
こう……」

握られたまま優しく米を研いでいく

「うん上手。
お水入れたらこの中に入れてここを押してね。」

言われた通りにする
ぴっ

窓の外を見た
「外行きたいの?」


いつの間にか隣にいた女にびっくりする
「ご飯の準備終わったら少し散歩でもする?
私のお気に入りの場所もあるのよ。」


「ぁあ…
行ってやる。」


ふふっ
女が笑った


汁物を作り唐揚げも揚がった
「よし!
行こっか。」


裏口から出ると飛び石が林の中へと導いていた
「こっちよ!」
手を繋がれグイグイと引っ張られる
元気だな…
その表情は楽しそうだった


いきなり道が開けた


なんだここ…
日本庭園の中には合わない洋風な庭
カットされた木々に
植えられた様々な花
真ん中には噴水が水を噴き出していた


「すご…」


「すごいでしょ」


漏れた言葉に女は反応した
「あの人が私のために作ったの。」


隣を見た
女はどこか遠くを見ていた


「ほら、あの人の妻になるってことは…
普通じゃいられなくなるでしょ
私が飽きないようにってここにあった庭園を潰して花畑にしてしまった。
あの人のお母さんが好きだった庭をよ?
バカよね」


彼女の目は少しだけ潤んでいた
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