黒犬


「いい子だ。」


そう言って彼は俺の頭に手を乗せた




「それじゃ。
頼む。」




次の日
男は俺の耳元でそう囁いて漣を出て行った



「なにー?
なんて言われたのー?」



天堂さんがしつこく聞いてくる
黙ったまま部屋へ戻る
「待ってよー。
君の監視役頼まれたんだから。」
……。

監視役?
俺に紗智栞さん頼んでおきながら…
まだ監視役なんて…

どんっ

近くにあったゴミ箱を蹴る
「こらこら。
汚れるだろ。」
男はまたへらへらと笑いながら散ったゴミを拾った

「俊平くん、
こっち。」

紗智栞さんが廊下の先で手招きをした
総丘さんを置いてそちらへ急ぐ

「これあげる。」

ニコニコした顔で何かラッピングされた袋を渡される
「開けて。」
……?
リボンをとって中身を出す


………?
……


「気に入った?」


気に入ったも何も
デニム生地のそれ


「付けてみて。」


首に輪を通し腰で紐を結ぶ


「うん。
よく似合ってる。」


「なんで。
これを?」


「ほら愛兎3週間いないでしょ
その間に家事上達させてあいつを驚かせるとかどう?」


良いアイディアでしょとウインクをした彼女
何が…。


「きっと帰った頃に家事が上達してたら
次のステップに進めるわ。」


次…
……


「やります。」


「あら、いい子。」


そう言って置かれた彼女の手は彼の手に似ていた


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