黒犬



ー朝は誰よりも早く起きた


ご飯を炊いて掃除を終わらせる



ガタッ
扉が開く



「俊…
何してんだ…。」



眠そうに目をこする鬼は不機嫌そうな声を出した
「家事終わった!
教えてくれ!」

ふっ
彼が笑った

「それ似合うな。」

指さされたのは紗智栞さんにもらったデニムのエプロン
「着替えてくる。
待ってろ。」
部屋の奥へと行った男
追いかける















浴衣から露わになる引き締まった体
筋肉が付いてない場所なんて無い
全身に程よくしかしガッチリと付いたそれ

「綺麗…」

白い体と淡いピンクの髪
前髪から覗く茶色の瞳




「覗きか…」

扉が勢いよく開いた
「私の体なんて風呂で毎日のように見てただろ」
着物に着替えた男は
付いてこい。と言って歩き出した

格技場

「今なら誰もいない。
体力は自分でつけろ。
実践は私がいつでも相手をする。」

彼の目つきが変わる
鋭く冷たい目

「かかってこい。」

武器は何もない
素手だ……

地を蹴って勢いよく彼に向かった








「遅い。」






彼の姿が見えなかった
後ろから声がした






…っ






視界がぐらりと揺れた




目を開いた
茶色の瞳が近くで俺の顔をのぞいていた
頭の下が柔らかい



「朝飯だ。
行こう。」



身体をあげる
「……。」



「おはよう!」

紗智栞さんが出迎えた

「朝から何してたのー?」

総丘さん

「くっ…」

天堂さん
笑ってる。

「中谷くん、愛兎の膝枕はどうだった?」

天堂さんを睨む
見られていた。

















「2人とも睨まないでよー。
怖いなー。」

それでもへらへらと笑うのをやめない男
「ほら喋ってないでご飯食べちゃって。」

紗智栞さんが険しい顔でそう言った


「「ごちそうさま。」」


愛兎さんとかぶった
「愛兎さん、
もう一回……。」

















ふっと彼は笑った
格技場は強面の男たちがいっぱいいた

剣道
柔道
空手

それぞれ戦っている

「この人たちも強い?」


















「そうじゃなきゃここにいない。」




「ふーん。」


















彼と向かい合う
男は伸びた髪を1つにまとめた
鋭い目つきのまま口角を柔らかく上げた





……





何度目だ。
天井を見上げる
男は少しだけ肩を揺らしていた




チャンスだ…




〜〜〜




「今のは.良かったぞ。」

俺はまた天井を見上げた
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