黒犬
忠犬




〜ハッピーバースデートゥーユーハッピーバースデートゥーユーハッピバースデーディア俊〜
ハッピバースデートゥーユー



蝋燭がたったケーキが目の前に運ばれる



ここに来て一年



オレは一つ年をとった







「俊平くんは何歳になったのかなー?」

子供をあやすような声で総丘さんが聞いてくる
「14です。」
身長は少し伸びた
愛兎さん紗智栞さん総丘さんは早く吹き消すように笑って愛で促す
少し照れ臭い

ふーっと消した

部屋が暗くなる


パーンパーン

火薬の匂いがする
ただそれは危ないものじゃない
紙テープや紙吹雪が出てくるものだ

電気がつく
体中にカラフルなそれらが付いていた


「豪華な食事と
ケーキ……」


こんなに誕生日を祝ってもらったことがあっただろうか。
いやない。


俺は今幸せだ


そう実感した





〜〜〜





その日は仕事も手合わせも稽古も何もなかったただのんびりしてていいと愛兎さんに言われていた
けどすることはなかった




だから
庭を歩いていた



久しぶりだな…。
あのいつか紗智栞さんに連れていってもらった花畑は今日もたくさんの花を咲かせていた



平和だ…



こんなにのんびりしてていいんだろうか
空を見上げた
青い空に鳥が飛んでいく


〜〜〜


体に揺れを感じた
目を開ける
桜色の髪が見えた
辺りは暗い

「寝てろ。」

目、覚めるだろ…
でも、愛兎さんの背中から伝わる温もりと振動が心地よくて意識をそっと手放した




「今は、寝てろ…」




夢を見た。
どこかはわからない
漣よりは小さいけど立派な日本家屋
真っ赤な部屋
真っ赤な男
鋭く光る日本刀




…!

まだ辺りは暗かった
丸窓からさす月明かりが不気味だった

いやな夢…

「どうした?」

座ったままのシルエット
「いや。」
布団を被った

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