黒犬
男が目を開いた
「手術は無事終わりましたよ。」
外は濃霧に包まれている
「俊…。」
優しい口調
「俺漣に帰ります。」
つま先を出口へ向けた。
「俊平…」
一歩ずつ出口へ歩を進める
「中谷 俊平……」
強い口調に歩を止めた
「こっちを向け…」
男の方を見た
「ひどい顔だ。」
目頭が熱くなって男のベットに駆け寄った
白い布団に顔を沈める
「俊平…
お前ずっと泣いてただろ。
うるさくてゆっくり寝てられなかったよ…」
鬼の手
やっぱり暖かい
「ありがと…
お前は強いよ…」
男の方を見た
笑っていた
「愛兎でもなんとでも呼べ…」
「愛兎さん…」
「それでもいい。」
〜〜〜
朝だ
寝ていたらしい
ベットに目を向ける
!!
「愛兎さんっ。」
部屋を出た
手すりにつかまって歩く大きな男
いや今は小さく見える
「ダメです。
今は寝てなきゃ…」
「私は漣に戻る。」
強い目
男の体がぐらりと揺れた
その体を抱えて病室へ戻る
ベットに寝かせた
先生が部屋に入って来た
「漣 愛兎
お前が戻りたいなら戻ってもいい。
ただ、戻ったらお前は死ぬ。」
「私は戻る…」
「お前なあ、1ヶ月ここで寝てればいいだけだ。
お前がいない1ヶ月の間に漣は潰れるか?」
「分からない。
可能性はなくはない。」
「少しは仲間を信じろ。」
「信じてる。」
「じゃあ少し休んでろ。」
「ただ「心配か?
信じてるならそんな心配無用なはずだ。
おまえが信じられなきゃ漣はここで終わりだ。
そんな長の組なんてすぐに滅ぶ
今まではやって来られたかもしれないがもっと強いのが来たらすぐに滅ぶだろうな…
おまえが信じられないなら漣はこれ以上強くなれない。
俺は断言できる。」
はあーーと諦めたように大きく息を吐いて男はこちらを見た
「私はここで1ヶ月寝ていれば治るか?」
「ああ。」
医者は即答した
「俊平、お前が皆を守れ。
ただし余計なことはしなくていい。
ただあそこにいてくれ。」
男は言った
俺は医者に一礼して漣に戻った