黒犬
「じゃあ、これで作ってくれ。」
シンプルな黒い生地
でも光沢があってとても綺麗だ
反物屋
「俺、和服は苦手だ。」
そういうと男は驚いた
「そうか。
いらないか。」
「ああ。」
店を出た
「俊、髪伸びたな。」
車の中
フロントガラスには雨が落ち始めた
前髪が邪魔くさい
「湊のとこ寄ってくか…」
は?
湊?
「安心しろ。
私の髪も15の時からずっと湊が切っている。」
綺麗に整えられた頭
アシメってやつ?
「どんな髪型がいいか考えとけ。」
どんなって…
着いちゃった…
ビニール袋をかけられてるてる坊主みたいな状態
後ろではハサミを持った愛兎さんの弟が無表情で待っていた
困って愛兎さんの方を見る
「長さだけ取ってあげて
あと、前髪邪魔そうだから邪魔にならないように」
鏡ごしに合う目
冷たい目
愛兎さんより切れ長だ
色だって少し濃い
「なに?」
声も高い
喋り方だって少し幼稚だ
ーチャキ
ハサミの音が止まった
「はい。
終わり。」
でも使う言葉はたまに似てる
口数は圧倒的に少ないけど
鏡を見て自分を見る
スッキリした…
切りそろえられた髪
気持ちいい…
「ありがとう。」
小さく言って愛兎さんのとこへ行った
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