黒犬

























〜SIDE 愛兎
























漣は静かだった
今日の夜空の色と同じだった
人の気配がない
















扉をあけても飯の匂いもしなかった



















かすかに格技場から聞こえてくる整った呼吸に人の気配を感じた



















カラン

















下駄を脱ぎ捨て畳の匂いへ近づく










































「俊…。」











返答はない。























「しゅんぺい。」

























声が暗闇に吸い込まれる。





足を一歩。









踏み入れた


























「シュンペイ…?」





























「俊平…!!」


























暗闇で黒い影が動いた
途端に私の体は床に叩きつけられた











頭に衝撃が走る














体は初めて感じる強い力で抑えられた
少し朦朧とする意識の中影の正体が俊平だということを知る
上を見れば光のない黒い目が私を見据えていた


































「私の喉でも噛み切りに来た?」




















彼はなにも言わない
手が震えている























「これ、どういうことだ。」








今まで聞いたことのない声
彼の手に握られた一枚の便箋






















奥で光る銀色
彼の首元にはなにも光ってなかった



















































































原田組か…
ふふっ































「書いてある通りだよ。
私は俊の両親を殺した。」


























.
< 49 / 65 >

この作品をシェア

pagetop