黒犬
「天堂さん………
総丘さん………
タスケテ……
たすけて…
たすけて下さい。
」
二人の男が暗闇から颯爽と現れる。
大きいサクラ色は二人によって運ばれ一人の男だけ戻ってきた
俺は立ち上がった
「待って。
手見せて」
男が手に持ってたのは木製の箱に十字マークがついたもの
中からガーゼや青い蓋の消毒液を出した
手を見れば皮がべろりとむけていた
血がにじんでいる
天堂さんは何も聞かなかった
部屋に戻った
布団の上で体育座りをしてそこに顔を埋めた。
戸を叩かれても応答せずにいた
古い建物の中あるその白い部屋からは静かな呼吸音だけが聞こえていた
ノックもせず黒の男はそこへ入る
中の男は立っていた
男がこちらを振り返る
顔は痛々しく腫れていた
赤黒い痣はまだ鮮明に残っている
開いた首元からは白い布が見え隠れしていた
それでも月明かりに照らされたその大男は綺麗だと思った。
「なんで殺さなかった。」
男は低く重い声でそういった。
「選べっていっただろ。」
考えて見たんだ。
記憶のない両親と
俺を拾って色々教えてくれた愛兎…
どっちが大切かって…
たしかに両親を殺したのが愛兎だって知った時
俺を一人にしたのが愛兎だって知った時殺したくなった。
でも話を聞いたらわからなくなつた
もう少し考えてみたくなった
もう少しいっしょに…
一緒にいてみようと思った
いや
ずっと…
ずっと…
」
雫がポロポロと瞳から溢れる。
男は何も言わずに俺を抱き寄せた