黒犬
少し落ち着いて…
男の顔を見ると水滴が付いている
体が熱い
呼吸が早い
男の額に手を当てた
ひどく熱い
男は少し笑って体を傾けた
バタン…
白衣を着た男と女性が部屋に入って男をベットへ運んだ
その白い男女がサクラ色に管を刺し酸素マスクをつけ…処置をしていく
よく見る重体とか重傷患者にされるように男にもたくさんの管がつき男は機械に囲まれていた
「熱が引かないんだ…
それに傷の治りも遅い…
SpO2も低い…
あまり良くない。」
男は淡々と告げて
部屋を出ていった…
……
………
男はなかなか目を覚まさなかった
何度この場所で夜を明かしただろう
空は明るい
光が窓から入ってくる
眩しい……
「しゅん…。」
まだ熱い手が軽く俺の手を握った
男を見ると薄く目を開いていた
彼は握っていない方の手でマスクを取った
「私にまだ忠誠するなら漣に戻ってくれ。」
「不安でたまらないんだ…
私がこうして寝てる間に皆が傷つけられてるんじゃないかと考えると……。」
初めて聞いた弱音に驚きを隠せなかった
「それに……
今回のは俺一人で皆を守れる自信がない………」
情けないな…
と呟いて桜色は管のついた腕で目を覆った
俺は何も言わず部屋を出た
最初はいつものリズムで進めていた歩はだんだんと早くなりあの場所が近くなるにつれ早くなっていた
門をくぐり扉を開ける
「おかえり。」
天堂さんは温かい声で出迎えてくれた