黒犬
「風邪だな。
真冬に海に入るからだ。」
ばかだな。
とでも言いたげな口調で男は言った
「ゆ…h…が。」
「ん?」
「夕日がきれいだった。」
ははっと笑って、彼は部屋を出て行った。
しばらく仕事はしなくていい。
あの人の弟はそう言った
布団の中で丸くなる
熱が高いらしい
寒かった
体が震える。
少し眠ろう。
目が覚めたとき部屋は暗かった。
月明かりも入らない
体はまだだるい
部屋が寒い
熱を出したのは人生の中でこれが3回目だと思う
2回目はここで愛兎に負けたとき
その時は愛兎さんを始め紗智栞さん、天堂さん、総丘さんが代わる代わる看病をしてくれた
3回目は今日
1回目は。。。
死ぬかと思ったな。。
施設から抜け出し夜の街を彷徨っていたとき
あの日も寒かった。。
道の端で倒れてる薄汚れた俺に誰も興味を示さなかった
俺に恨みを持ったもの以外。
一人ただただ道端で蹲っていた
まあ何とかなったけど。。
なんだか。
いろいろ思い出してしまった。
今回は家も寝る場所もあるけど。
あの時と変わらない。。
かさっ
とん、、とん、、、
襖が叩かれる
返事をせずともその襖は勝手に開いた
「由奈さん。。
と
美麗ちゃん??」
「ごめんなさいね。
美麗ちゃんがどうしてもあなたと寝たいって。
湊には内緒で連れてきたからお願いできる?」
枕を抱いたパジャマ姿の美麗ちゃんが俺のもとにかけてくる
「お布団入れて?」