3月生まれの恋人〜first christmas〜


約束の12時半きっかりに兄貴のマンションへ顔を出すと

“遅い”と罵られて泉の車に押し込まれた


こんな事がある度に、一体兄貴は泉の何に惚れたんだ?と言いたくなるが

ほぼ俺と“見た目同じ”な兄貴に対しては、泉は意外に女らしい振るいを見せたりもするから・・・


結局、夫婦ってやつは不思議だって思う


幼稚園へ着く直前に、ビデオのフィルムが足りない事に気づき、電気屋へと戻り買い物をした

自分が忘れてきたくせに、いつのまにか俺が悪い事になっているのも、全く持って不思議だった。




7〜8分遅れで幼稚園に到着すると、既にクリスマス会は始まっている様子で

さくら組からも子供たちの歌う声が聞こえてきた

ビデオ係という大役を押し付けられ、うんざりしたいのは山々だけど

内心、うんざりを大きく上回る勢いで俺はうれしくてしょうがなかった


何故かってそれは

“ゆづ先生”に会えるから・・・。


先生してない彼女も文句なしに“可愛い”に違いないけど

先生してる彼女は“さらに可愛い”気がする俺

子供達に向けられる笑顔を俺にも見せてもらえるなら・・・

どんなにか幸せだろうって、運動会の時本気で思った。
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