冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
ここでセシリアとルディガーは二手に別れる。ルディガーは予定通り情報収集を、セシリアはライラに付き添うのが今日はメインだ。

「いいですか? 酒場に入っても、くれぐれも飲み過ぎないでくださいね」

 セシリアは硬い口調で上官に釘をさす。おかげでルディガーは眉尻を下げ、困った顔で笑った。

「わかってるさ。シリーこそせっかくなんだからライラと一緒に楽しんでおいで。今日はライラもいるし君は一般人だ。下手な奴についていかないように」

「やめてください、子どもじゃないんですから」

「だから言ってるんだよ」

 ルディガーはセシリアの頭になにげなく触れる。呼び方のせいか、やりとりの内容からか、ふたりの纏う雰囲気が上司と部下から急にプライベートに切り替わった気がした。

 ルディガーのあまりにも自然な触れ方に、ライラは目を奪われる。しかし当の本人であるセシリアは拒否しないものの渋い表情を崩さない。

 対するルディガーの顔にはどこか切なさが混じる。けれどすぐにいつもの柔らかい表情に戻った。

「では、夕暮れ時にまたこの広場で」

 セシリアはため息をついて上官を見送ると、ライラと共に歩き出した。

「どちらに行かれますか?」

「まずは薬種店に行きたいんです。欲しいものがあって……」

「いいですよ、お付き合いします」

 自分よりもやや背の低いライラを建物側にしてセシリアは横に並ぶ。背筋がぴんっと伸びて姿勢よく、凛とした横顔。

 柔らかい金色の髪は自分にはないもので、ライラはつい目線を送ってしまう。
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