冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
「セシリアさんは……その、エルンスト元帥の副官をされて長いんですか?」

 ふと口を衝いて出た質問に、相手は律儀に考える素振りを見せ、回答してきた。

「そう、ですね。彼がアードラーになる前からですから、副官としてはかれこれ六年でしょうか」

 ライラにとって六年はかなり長い年月だ。六年前の自分を思い浮かべるが、まるで子どもだった。

 今、目の前にいる女性も十分に若い気がするものの年齢を尋ねるのはどうも憚れる。それを悟ったセシリアが自分から話しはじめた。

「私は二十二になるので、十六の頃からですね」

「十六歳ですか!」

 思わず漏れた声は思ったよりも大きく、ライラは急いで口をつぐむ。今の自分よりも幼い頃からとは驚きが隠せない。

 ライラは興奮してセシリアに話しかけた。

「すごいですね。セシリアさんの実力あってこそといいますか。大抜擢ですね」

「いえ。私が自ら志願したんです。あの人のためになら、すべてを捧げてもいいと思ったので」

 さらりと続けられた言葉を額面通り受け取っていいものか悩む。なかなか大胆な発言にライラはつい動揺した。

 そこでセシリアはなにかに気づいた面持ちになり、慌ててライラの方に顔を向ける。

「今の話、エルンスト元帥にはしないでくださいね。調子に乗りますから」

 冷静沈着だった彼女の感情が揺れ動く。ライラは目を瞬かせながらも素直に頷いた。そして一瞬の沈黙がふたりを包み、どちらともなく噴き出して表情を緩めた。
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