冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
「城仕えとはこれまた立派だ。同年代の女性もいるなら安心だな。それで、今日はどうしたんだい?」

「いくつか欲しいものがあるんです」

「わかった。なにをお望みかな?」

 そしてライラは空で薬草の名をいくつか挙げていく。ディルクはカウンターのうしろにある棚の数えきれないほどの小さな引き出しから指示された薬草を確認してはライラに見せた。

 場所も名前もすべて把握済みだ。ディルクの薬草の知識は相当なもので、ライラに薬草の効能や相性、煎じ方などを尋ねられても淀みなくアドバイスしていく。

 話からおすすめの薬草なども挙げていき、ライラに指定されたものと共に前のカウンターに一種類ずつ並べていく。

「このナイーフはグナーデンハオスから買ったんだ。相変わらず上手く育てているよ」

 いくつか選んだあとに取り出したのは、赤くて小さな花を乾燥させたものだった。精神的安定をもたらすとして貴族の間では人気の品だ。

 ライラもよく世話したのを思い出し、自然と笑顔になる。

「それは、よかったです」

 結果的に六種類ほど購入する。金は出かける前にスヴェンに渡されていた。護身用の短剣と共に。

『いいか。使う必要がないのを願うが、どうしても自分の身に危険が迫ったら迷わなくていい。ただし自分を傷つける真似はするなよ』

 意外と重みのあるナイフは利き腕である右腕のワンピースの裾に隠してある。物騒なものと自覚はあるし、ライラ自身も使う状況には巡り合いたくない。

 けれどスヴェンから手渡されたおかげで、お守りのような温かさも感じていた。
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