冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
店の外に出て、中との明るさの対比にセシリアはわずか目を細める。一歩前へ進むと、ライラが礼を告げてきた。

「付き合ってくださってありがとうございます」

「いい人ですね」

「はい。彼は孤児院の活動に理解があって、昔からよくしてくれていました。外出は好きではなかったんですが、ここで様々な薬草の効能や特徴などの話を聞くのは楽しみで……」

 そこでライラは言葉を切り、空を見上げた。この風景はずっと変わらない。

 狭い路地の建物の合間から覗く色は青というより白に近い。まるで自分が閉じ込められているかのような錯覚に陥る。

 ライラは薬草の入った紙袋を持ち直し、改めてセシリアに向き直った。

「もうひとつ行きたいところがあるんです。お付き合いいただけませんか?」

 セシリアに断るという選択肢はない。時間も十分にあるし、今日はライラの希望を優先させるのが任務だ。けれどそれとは関係なく彼女自身もライラに対し興味が湧いていた。

 中央広場から西の方角へとライラは歩き出し、セシリアが半歩遅れて続く。足を進めていくうちに少しだけ打ち解けたライラとセシリアは雑談に花を咲かせはじめた。

「女性の団員の方は少ないんですね」

「どうしても危険が伴いますし、本人がよくても周りが反対する場合が多いですから」

 それを聞き、ライラはさらにセシリアに尊敬の眼差しを向ける。するとセシリアは気恥ずかしそうに苦笑した。

「実際、女性の方が適する任務もありますからね。私の立場はそういう理由もあるんです」

 現にライラの件に関してもセシリアの存在は大きい。
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