冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
しばらく話が盛り上がったところで開けた場所に出た。辺りは家がまばらになり、いくつかの木々が影を作り田園風景が広がっている。

 中心部と比べると賑わいはないが、のどかな雰囲気だ。

 ライラは前方に視線と意識を向け足を動かす。左手には農場があり家畜の放つ匂いや気配を感じる。そしてアーチ型の薄緑色の屋根が目に入った。ライラの育った場所であるグナーデンハオスだ。

 ここを出てまだ半年ほどしか経っていないはずなのに、ライラにはものすごく久しぶりの帰郷に思えた。

 そこで右手にある庭の方から人の気配を感じたので、ライラはセシリアと共にとっさに近くの木の影に身を潜めた。

 十代後半の少女と十歳前後の少年ふたりが籠をもってなにやら話している。

「アル、ナイーフ全部売れてよかったね」

「今年は豊作ね」

 少年に対し少女は穏やかに微笑む。

「エアケルトュングもいい感じだよ」

「あれは葉に小さな棘があるから気をつけなきゃだめよ」

 腰を屈め言い聞かせる少女に少年は口を尖らせた。

「わかってるよ。アル、ライラみたい」

「しょうがないでしょ。今は、私が一番お姉さんなんだから」 

「アルー! ザックー!」

 建物の中からほかの子どもたちがふたりの元へ駆け寄ってきた。ライラの知っている顔もいれば初めて見る子どももいる。けれど皆、笑顔だ。
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