冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
「バルシュハイト元帥は一緒じゃないの?」
「あいにくね」
まさかここで彼女の口からスヴェンの名前が出るとは思ってもみなかったので、ライラの心は意識せずとも大きく揺れる。
動揺を顔に出さないようにしていると、ジュディスはわずかに顔を歪めた。けれど彼女の美しさが損なわれはしない。
「そう、残念。ずっと顔を見ていないのに。なら彼に伝えて。夜も寒くなるし、いつでも温めてあげるからって」
ルディガーは苦笑して、一瞬ライラの方を窺った。けれどライラにはジュディスの発言も、ルディガーの視線の意味もよくわからない。
しかし目の前の彼女がスヴェンの知り合いなのは、はっきりと理解できた。なんとなく親しい間柄だというのも。
「彼女はここらへんで一番大きい大衆酒場で働いていてね。あの外見だから言い寄る男も多いし、なにかと情報通で……」
ジュディスが去った後、聞かれてもいないのにルディガーがライラに気まずそうに説明する。セシリアは余計な口を挟まず、難しい顔で事の成り行きを見守っていた。
「綺麗な人でしたね」
ぽつりとライラは呟く。憧れというより、モヤモヤした気持ちが晴れない。彼女がなにをしたというわけでもないのに、心の奥底をべったりとした手で触られたような不快感だ。
自分の心に棘が生えて勝手に痛んでいる。ライラは正体不明の感情を振り払うべく、お目当ての薬草の入った紙袋をぎゅっと抱え直した。
しばらくその場にはジュディスの甘い残り香が漂っていた。
「あいにくね」
まさかここで彼女の口からスヴェンの名前が出るとは思ってもみなかったので、ライラの心は意識せずとも大きく揺れる。
動揺を顔に出さないようにしていると、ジュディスはわずかに顔を歪めた。けれど彼女の美しさが損なわれはしない。
「そう、残念。ずっと顔を見ていないのに。なら彼に伝えて。夜も寒くなるし、いつでも温めてあげるからって」
ルディガーは苦笑して、一瞬ライラの方を窺った。けれどライラにはジュディスの発言も、ルディガーの視線の意味もよくわからない。
しかし目の前の彼女がスヴェンの知り合いなのは、はっきりと理解できた。なんとなく親しい間柄だというのも。
「彼女はここらへんで一番大きい大衆酒場で働いていてね。あの外見だから言い寄る男も多いし、なにかと情報通で……」
ジュディスが去った後、聞かれてもいないのにルディガーがライラに気まずそうに説明する。セシリアは余計な口を挟まず、難しい顔で事の成り行きを見守っていた。
「綺麗な人でしたね」
ぽつりとライラは呟く。憧れというより、モヤモヤした気持ちが晴れない。彼女がなにをしたというわけでもないのに、心の奥底をべったりとした手で触られたような不快感だ。
自分の心に棘が生えて勝手に痛んでいる。ライラは正体不明の感情を振り払うべく、お目当ての薬草の入った紙袋をぎゅっと抱え直した。
しばらくその場にはジュディスの甘い残り香が漂っていた。