冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
城から来たときと同様に、帰りもライラはセシリアのうしろに乗せてもらう。城が山の上にあるからか夕日を背にして馬は斜めになっている道を力強く駆け抜けていく。

 到着した頃、太陽の消えた空は徐々に紫色に染まりだしていた。

 馬から降りてセシリアとルディガーにライラは再度お礼を伝える。セシリアの申し出で部屋まで付き添われることになり、なにからなにまで恐縮するばかりだった。

 扉の前で挨拶を交わしてから、ライラはドアをノックする。中を覗けば、丁寧に部屋の掃除をしていたマーシャがライラに気づいた。

「おかえりなさいませ、ライラさま」

「ただいま、マーシャ!」

 飛び跳ねそうな勢いでライラはマーシャの元へ近づいた。

「久々の街は楽しめましたか?」

「うん。お目当てのものも買えたし、もう大満足。行ってよかった」

「それは、よかったですね」

 かすかに目を細め、目尻の皺が深くなったマーシャにライラは紙袋の中から小さな花束を取り出した。白と黄色の可憐な花たちだ。

「これ、少しだけどマーシャにお土産」

 マーシャは意外そうに目をぱちくりとさせてライラから手のひらサイズにまとめられている花を受け取る。

「ありがとうございます」

「ゲルプの花は小さいけれど香りがよくて、リラックス効果もあるから」

「せっかくですしお部屋に飾りましょうか」

 そこまでたいそれたものでもないが、マーシャの提案にライラは笑顔になる。マーシャもまた花を眺め顔を綻ばせた。

 そしてライラは躊躇いがちに切り出した。

「あの、実はマーシャに相談というか、お願いがあるの……」
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