冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
スヴェンの問いかけにライラはしばし目を泳がせる。

「うーん。でも知り合いに会いたかったし。それにグナーデンハオスの様子も見ておきたかったから、だから……」

 言葉尻を弱くしてライラは答える。肯定も同然だ。

 しかしライラとしては自分が好きでしたことなので、大きなお世話だと捉えられるのも重々承知していた。

 恩着せがましくするつもりも、押しつけるつもりもない。ただ……。

「スヴェンに少しでも気に入ってもらえたら嬉しいなって。シュラーフを入れないレシピもあるから、嫌いじゃないならそっちに淹れ直すけど」

 そう言ってカップを引き下げようとスヴェンの方に回り込む。まだ中身は残っているが、味見程度にと思っていたので十分だ。

 今、彼を眠くさせるわけにもいかない。

「もしよかったら寝る前にまた飲んでくれたら……」

 言いながら椅子に座っているスヴェンの前に手を伸ばす。ところが、カップに触れる前にライラの腕は急に捕えられた。相手は言うまでもない。

 まだ飲むつもりだろうか、と思ってスヴェンの方を確認すれば、感情を顔には乗せず、まっすぐにこちらを見ていた。

 そしてそのまま腕を引かれ、なぜか唇が重ねられる。

「……え?」

 状況に頭がついていかず、ライラの頭は混乱した。唇にかすかに感じた温もりはなんだったのか。今の流れで予想外すぎる出来事に脳が正常に事態を認識しない。

 対するスヴェンはライラの腕を離さず端的に回答する。

「したくなった」

 その言葉にライラの目は大きく見開かれ、続いて急になにかを考え込む。
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