冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
「……そういう効果はないはずだけど?」

 使用している薬草類は安眠や精神安定をもたらす効能はあっても、媚薬的な成分はないはずだ。

 真面目に返したライラにスヴェンは虚を衝かれる。けれどすぐに口角を上げた。

「なぜ言い切る?」

「だって」

 説明しようとするライラの口をキスで塞ぐ。先ほどよりもはっきりと唇を重ねられ、ライラはすぐさま顔を離した。けれど頬に手を添えられ、また口づけられる。

 キスは容赦なく続けられ、スヴェンは空いている方の腕をライラの腰に回し、距離を取ろうとするのを阻む。さらにライラを強引に引き寄せ、横抱きにする形で自分の膝の上に乗せた。

「ちょっ……ん」

 なにか言う前に、上を向かされキスで言葉は封じ込められる。こうなるとどうしてもライラの方が分が悪い。

 心臓が激しく打ちつけ、慣れない唇の感触に目眩を起こしそうだ。

 なんとかしなくては、と抵抗しようにも上手くいかない。息継ぎのタイミングもわからず、呼吸もままならない状況だ。精悍な顔がすぐそこにあって、触れてくる手は大きくて温かい。

 流されそうな自分が怖くなる。

 ふと唇が離れ、ライラの滲んだ視界に相手が映る。相変わらずなにを考えているのか表情からは読めない。

 濡れた唇で言葉を紡ごうと息を大きく吸ったところで先に男の方が動いた。

 腕の中のライラを強く抱きしめると、耳元で低く囁いて彼女の名前を呼ぶ。
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