冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
「ライラ」

 そのまま耳たぶに口づけられ、ライラの体が震えた。スヴェンの唇は彼女の輪郭をなぞっていき白い首筋に添えられる。そして薄い皮膚を軽く吸い上げられ、ライラは反射的に声をあげた。

「ま、待って。お水をっ」

 そこでスヴェンの動きが止まる。狼狽えっぱなしのライラの首元にスヴェンは顔を埋めたまま静かに肩を震わせはじめた。

 意味がわからない。顔を上げたスヴェンは意地悪くライラに告げた。

「お前は本当に騙されやすいな」

 一瞬でライラの頭は真っ白になる。しかしスヴェンが自分を謀ったのだと理解して顔を歪めた。

「……ひ、ひどい」

 ライラはスヴェンから目を逸らす。呼吸の乱れが今になって激しさを増していく。激しく脈打ち、体も熱い。

 涙腺が緩むのを必死に我慢した。

「びっくりした。私、とんでもないもの作っちゃったって」

 責める口調で訴える。ライラ自身何度も試飲したし、マーシャにも飲んでもらった。けれど男性に飲ませたのはスヴェンが初めてだ。

 だから、はっきりと媚薬成分がないと確信がもてなかった。こんな行動を取られ、さらにはあのスヴェンの言い回しだ。

 複雑な感情が渦巻いて、今の自分の気持ちがなんなのかはっきりさせられない。安心したのか、悲しいのか、怒っているのか。もうぐちゃぐちゃだ。

 スヴェンは、ライラの声色にさすがにからかいすぎたと自覚する。なだめようとライラの頭に手を置こうとしたが、すぐに振り払われた。
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