冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
「試行錯誤してやっとこの味を出せたの。マーシャに美味しいお茶の淹れ方を教わって、何度も淹れる練習もしてね」

 そこでライラはスヴェンが気にしていた件について、ようやく釈明する。

「エリオットに聞いていたのは、ハーブのアドバイスをもらっていたの。彼も孤児院にいた頃、薬草の世話を一緒にしていたから……」

 スヴェンに隠してまで、こうして行動したのは自己満足かもしれない。

 でも、ほんの少しでもスヴェンが飲んでくれたら、美味しいと思ってくれたら……彼の役に立ちたかった。

「それで、ここ最近、寝つきがよかったのか」

「うん。自分で試すしかなかったからスヴェンの部屋に行く前にね。おかげで効果は実証済みだよ」

「で、今も眠くなっているわけか」

 図星を指され、ライラはわずかに反応した。実はスヴェンに淹れる前に、最後に念のためと自分も淹れて飲んでいたのだ。

 無事にスヴェンに飲んでもらえて、気が抜けたのもある。睡魔は確実にライラの元を訪れていた。

「少し部屋で休んでくる。邪魔してごめんね」

 自分の用事は済んだので、さっさとここを後にしなくては。体勢も大勢だ。ところがスヴェンはライラに回している腕の力を強めた。

「このままでいいから、少し寝てろ」

「で、でも」

 思わぬ提案にライラはあたふたとする。どう考えてもこの姿勢はスヴェンに不自由を強いるだけだ。けれどスヴェンはぶっきらぼうに続けた。
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