冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
ライラは肩の線を落として、もう今日だけで何度目かわかないため息をついた。ベッドの端に座ってうつむくと、長い髪が顔を隠す。

 朝、部屋を訪れたマーシャも、あからさまにいつもと違うライラをかなり心配した。顔色も良くなく、朝食もろくにとれない状態で、マーシャは体調が悪いのではと気遣った。

 マーシャはライラが言葉を濁し、口数を少なくしていると、心配しつつも詳しい事情までは聞いてこなかった。
 
 迎冬会を間近に控え、城への人の出入りは激しくなる。ライラは基本的に部屋にいるようにとのお達しだ。厩舎にも薬草園にも足を運べない。

 軟禁にも似た状況だが、そもそも城に身を置く自分は様々な条件付きだったと思い直す。スヴェンとの結婚もだ。

 ぎゅっと膝で握り拳を作り、様々な思いを噛みしめていると突然部屋にノック音が響いたので、ライラの肩が震えた。

 マーシャが対応に出向いたが、ややあってライラの前に姿を現したのは予想外の人物だった。

「セシリアさん」

「突然、すみません」

 細い金の髪は綺麗にまとめあげられ、赤と黒の団服をきっちりと着こなしたセシリアが申し訳なさげな表情でライラを窺う。

 ライラは慌ててベッドから腰を上げた。

「マーシャには席をはずしていただいて、少しだけふたりでお話したいんです。かまいませんか?」

「は、はい」

 反射的に答えたもののライラは緊張気味だ。マーシャはお茶の準備をして静かに部屋を出ていった。

 セシリアには客人用のテーブルについてもらい、すっかり慣れた手つきでライラはカップにお茶を注ぐ。セシリアはお礼を告げてライラが正面に着席するのを待ち、おもむろに切り出した。
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