冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
「わかり、ません。でも純粋にスヴェンには幸せになってほしいんです。彼が少しでも笑ってくれると嬉しくて……」

 セシリアはなにも言わず、ライラの話に耳を傾け聞く姿勢を取る。ライラは自分の奥底にしまっておいた本音を、こわごわと告白した。

「なのに、自分から言っておきながらスヴェンが私をおいてジュディスさんに会いに行くんだって想像したら、胸が苦しくて、痛くて……涙が出そうになるんです」

 声にしただけで目の奥が熱くなり、ライラは服の裾を強く握って堪えた。

 矛盾している。スヴェンのためを思うなら彼の意思を最優先すべきなのに。こんなにも激しく自分を揺す振る感情をライラは知らない。

 邪魔になるこの気持ちを相手に悟られるのが怖くて、どうすればいいのか自分でもわからない。

「伝えてみればいいと思いますよ、バルシュハイト元帥に直接。あなたがこういう気持ちになるんだって」

 小さくも澄んだ声は、ざわつくライラの心にすっと入ってきた。ゆるゆると顔を上げるとセシリアが穏やかな表情でこちらを見ている。

「そして、聞いてみればいいんです、彼の気持ちを。あれこれ思い巡らせても、心の中は本人にしかわかりませんから。知りたいんでしょ?」

 理路整然とした話し方は、迷走していたライラの思考と感情を落ち着かせていく。ライラはぎこちなくも頷いた。

「はい」

 スヴェンはなにを考えているんだろう。どういう気持ちでいるの?

『気になるなら聞けばいい。答えるかどうかは俺が決める』

『俺は自分の意思ははっきりと口にする。だから、あれこれ考えて気を回すのは無駄骨だ。結婚したんだからそれくらいはわかっておけ』
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