冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
スヴェンの言葉が蘇り、ライラは切なくも思い出した。こうして落ち込んでいるだけでは事態は変わらない。改めて彼に向き合わなければ。

 昨日は伝えられた事実が衝撃的すぎて自分の気持ちにまで気が回らなかった。相手の気持ちにも。

 私たち、まだ夫婦だから……聞いても、伝えてもいいんだよね?

「私、ちゃんとスヴェンと話してみます」

「それがいいと思いますよ」

「ありがとうございます、セシリアさん」

 決心が固まり、仕事が忙しい中、わざわざここまで足を運んだセシリアにライラは改めてお礼を告げる。セシリアは柔らかく微笑んだ。

「いいえ。では、お茶をいただきますね」

 内心、セシリアは少しだけライラが羨ましかった。今は色々あってすれ違っていたとしても、スヴェンはいい意味でも悪い意味でもストレートで、わかりやすい男だ。

 自分の上官もフォローしているだろうし、このふたりはあまり心配しなくてもいいだろう。

 先ほどライラに言い聞かせた言葉を自分にも浴びせてみる。しかし、いつも自分のそばにいるのは無駄に愛想よく、はぐらかすのだけは人一倍得意な男だ。

 余計な思考に沈みそうになり、すぐに振り払う。そこでふと、ライラから声がかかった。

「すみません、冷めちゃいましたね」

「ですが味は十分に美味しいですよ」

 共にカップに口をつけ、お茶を味わう。温くなった液体にふたりはつい笑みをこぼした。
< 158 / 212 >

この作品をシェア

pagetop