冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
「……だが、俺じゃなくても、たとえばお前と結婚したとしても、あいつはきっと同じ態度で結婚生活を送っていただろうな」

 ライラが自分のために一生懸命になるのは、国王陛下の命令でとはいえ結婚したからだ。感謝とうしろめたさを感じて、行動しているだけ。

 それを目の当たりにして感情が抑えられなかった。割り切っている方が有り難いと思っていたのにどうしてこんなにも腹立たしいのか。

「だからなんだよ? 別の奴に譲ればよかったのか? 実際に今、彼女と結婚しているのは他の誰でもないお前自身だろ」

 投げやりに言い捨てたスヴェンにルディガーが鋭く切り込む。

「どちらも第三者の存在に振り回されて、自分の気持ちを置き去りにしすぎなんだよ」

 ルディガーは勢いよくソファの背もたれに体を預け、姿勢を崩した。

「お前は俺にみたいになるな。ましてや一緒にいられる期間が決まっているなら、尚更だ。本心を確かめられないまま居心地のいい関係を築いても、自分のものにはならないぞ」 

 ルディガーは自分を重ねてスヴェンに忠告する。スヴェンが自分とは違うからこそだ。

「後は本人同士でなんとかしろ。俺が言えるのはここまでだ」

 宙に放った言葉の後に、部屋には沈黙が降りる。そしてどちらからともなく立ち上がった。迎冬会も近く、今日もしなくてはならない案件がたくさんある。

 ドアへと歩みを進めるスヴェンに、ルディガーからふと声がかかった。
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