冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
エピローグ
冬解け間近のアルント城では、朝から城の者たちが目まぐるしくバタバタと準備に追われている。今日は城で結婚式が行われるからだ。

 書類が重要なのは庶民も貴族も共通しているので、国王の前で誓う儀式はいわば招待客のために行うものであり、王家の人間や、ある一定の身分以上の者のみが許されている。

 スヴェンとしては億劫でしかないが、アードラーという自分の立場を鑑みれば避けては通れないらしい。

 部屋では白の儀礼服に身を包んだスヴェンが不機嫌そうに壁に背を預けている。

 そこにルディガーと国王陛下としてではなく親友として顔を出したクラウスが祝いの言葉を述べるという名目で他愛ない会話を繰り広げていた。

「それにしてもお前は相変わらずまどろっこしいやり方をするな」

 ルディガーがクラウスに恨みがましい視線を送る。ライラとクラウスの賭けの件だ。

 ライラがてっきりスヴェンに会わないまま城を去ったと思っていたルディガーは後から事情を聞いて、かなり驚いた。

 クラウスは涼しい顔でルディガーの視線をかわす。

「ライラの願いを叶えてやっただけだ」

 そこでクラウスはスヴェンの方を軽く見遣り、目を伏せて微笑んだ。

「あいつが願ったのはスヴェンの幸せだからな」

 スヴェンがなにかを返そうとしたとき、部屋のドアが遠慮なく開け放たれる。無礼を咎める前に、血相を変えたマーシャに全員の注目が集まった。
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