冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
「結婚式の定番の花でね。花婿でも花嫁でもどちらでもいいから身に着けると幸せになれるんだって」

「花なら俺よりお前だろ」

 呆れた面持ちで告げると、ライラは慎重にスヴェンの胸元から手を離し、彼を見つめた。

「でも、スヴェンに幸せになってほしいし」

 スヴェンがなにかを言い返そうとする前にライラは満面の笑みをスヴェンに向ける。

「それにね、私はもう十分に幸せだから!」

 きっぱりと言い切ると、ライラはおもむろにドレスの両裾を軽く掴んで改めて花嫁衣裳に視線を落とす。

「子どもの頃に教会で見た花嫁さんになれる日が自分に来るなんて思ってもみなかった。ありがとう、スヴェン」

「……お前が幸せなら、その点だけは救いだな」

 優しく答えてからスヴェンは一度軽く目を閉じる。続けて目を開けるとぶっきらぼうに呟いた。

「ただ、結婚式なんて面倒なだけだ。群衆の前で、今更陛下や神にあれこれ誓ってどうする? 無意味だろ」

 スヴェンらしくてライラは苦笑した。ライラ自身も緊張を通り越して、結婚式など実感が湧かない。もう本番が迫っているというのにだ。

 とりあえずスヴェンを宥めようと口を開こうとする。しかし先に続けたのはスヴェンだった。
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