冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
「お前の瞳の色とフューリエンに関する事実は、アルノー夜警団では俺達しか知らない。基本、城の中は安全だろうがあまり不用意に出歩いたり、一人にならないように心掛けておけ」

「おい、スヴェン。そんな押し付けるような言い方するなよ」

「面倒事を増やされるのは御免だ」

 ルディガーのフォローをあっさりと切り捨て、さっさと部屋を後にしようとするスヴェンにライラも倣う。

 ルディガーとセシリアがなにかの作業か、仕事中だった。長居は無用だ。軽く挨拶を告げ部屋を出る。

「バルシュハイト元帥に副官はいらっしゃらないのですか?」

「いないし、俺には必要ない」

 質問に答え、そこでスヴェンがライラに向き直る。

「俺の部屋は隣だ。その奥が自室になる」

 スヴェンの言葉を追ってライラは目を動かす。アルノー夜警団の団員は三百人近くほどいるが、この城で、ましてや王のそばで生活する者は限られた一部の人間だけだ。

 結局、スヴェンの部屋は見せてはもらえず城の中の案内は再開された。

 受け身に説明を聞く一方だったライラだが、城の入り口近くに来て、思い切って自分からスヴェンに声をかける。ずっと気になっていたものがあった。

「あの、外を、中庭を見に行ってもいいですか?」

 勇気を出して放った言葉に、スヴェンは表情をまったく変えず了承も却下の意も唱えない。代わりに一度ライラから視線を逸らして、外に歩みを進める。

 その後をライラは子どものようについていった。
< 31 / 212 >

この作品をシェア

pagetop