冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
「すごい。立派……」

 持ち前の生命力で繁茂しているものもあるが、中は思ったよりも荒れていなかった。

「クリーア。ハイレンの実もある!」

 ライラは見知っている植物の名を呼び、近くまで行くと嬉しそうに顔を綻ばせた。ふとスヴェンの方に視線を投げかけると、ライラの血の気がさっと引く。

「手、大丈夫ですか? もしかしてさっきの葉で?」

 慌てふためき足早にスヴェンの元に歩み寄る。スヴェンの手の甲は細かい切り傷ができて、血が滲んでいた。

 スヴェンも指摘されて気づいたのか、なにげなく自分の手を浮かして確認する。その手にライラが触れた。

「エアケルトュングの葉でしょうか? あれは小さくて鋭い刺があるから」

「触るな」

 即座に拒絶するようにライラの手を振り払い、スヴェンは冷たく言い放った。目を丸くさせたライラにスヴェンは低く、苛立ちを含めた声で続ける。 

「俺への気遣いはいらない。余計な真似をするな。お前はただ、こちらの指示に従いおとなしく言うことを聞いていればいいんだ」

 これでまた彼女はおとなしくなるだろう。スヴェン自身、自分の態度が威圧的で冷たいものだと自覚もある。

 けれど、これでいい。優しくするつもりも、へたに関わるつもりもない。だから恐れられて嫌われるくらいがちょうどいい。

 しばしふたりの間に沈黙が走る。ややあってライラが小さく呟いた。

「……いやです」

 予想外の言葉にスヴェンは驚きと共に眉を寄せる。
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