冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
「なんだって?」

 ライラがまっすぐにスヴェンを見つめる。髪に隠された合間からかすかに覗く金色の瞳、そして深い緑を湛えた目は共に揺れることがない。

「私は物ではありません! それに陛下からの命令とはいえ、私たちは書類上だけとはいえ結婚したんですよね? だったらあなたの心配をするのは当然ですし、それくらいの権利が私にあってもいいじゃないですか!」

 今まで堪えていた感情を爆発させてライラは強く告げた。その瞳に迷いはなく、まるで初めて対峙したときのようだった。

 虚を衝かれたのも事実で、スヴェンは言葉を失う。異なる色の瞳が自分をじっと捕えていた。

 しかし、すぐに我に返ったライラは一度ぎゅっと唇を結び直し、伏し目がちになる。

「……自分の立場も弁えずに申し訳ありません。私のワガママで怪我をさせてしまい、すみませんでした。部屋に戻ります……けっして外には出ませんから」

 一方的に告げライラは先に薬草園から出ると、さっさとスヴェンとの距離を広げていく。後を追うか迷い、ライラが城の中に入ったのを見届けてから、スヴェンはその場で大きく息を吐いた。

『俺たちは物なんかじゃない!』

 先ほどのライラの台詞で沈んでいた記憶が呼び戻される。スヴェンは無造作に前髪を掻き上げた。そして傷ついた自分の手を見つめる。

 これくらいたいした怪我じゃない。痛みもほぼない。それなのに珍しく動揺にも似た感情が自分の中を駆け巡っていた。
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