冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
「おかえりなさいませ、ライラさま」

「ブラオンさん」

 一度もうしろを振り返ったりはせず、ライラは一直線に部屋に戻った。すると待機していたマーシャが静かに声をかける。

「マーシャでかまいませんよ。なにか召し上がりますか?」

 気づけば昼時が過ぎている。しかしライラは首を横に振った。部屋の中に足を踏み入れ、そっとテーブルにつく。

 それを見て、マーシャはカチャカチャと音を立てながらお茶の準備を始めた。

「旦那さまに一通り城の中を案内していただけました?」

 なにげない問いかけにライラは目をぱちくりとさせた。マーシャを見れば手を止めた彼女もライラの方を向き、視線が交わる。

「結婚宣誓書は無事に受理されましたよ。ご結婚、おめでとうございます」

「ですが私たちは……」

「事情も通じております。それでも結婚とはおめでたいものでしょう?」

 マーシャの言葉にライラは続けようとした反論を封じ込めた。握りこぶしを作り、両膝の上に置く。

「そう、かもしれません。ですがバルシュハイト元帥にとっては、この結婚は陛下から命令されたからであって、私のことは迷惑でしかないんだと思います」

「そうですね。スヴェンさまは、なによりも陛下の命令を優先しますから」
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