冷徹騎士団長は新妻への独占欲を隠せない
腕を組んだまま背もたれに体を預け、スヴェンは軽く鼻を鳴らし、厭世的に続ける。

「いいんじゃかないか。どうせ皆いつかは死ぬ。なら最後まで覚めない夢を見させてやれば」

「……ありがとうございます」

 どこか穏やかな顔をするライラとは対照的にスヴェンは理解不能といった様子で眉を寄せた。

「なぜ、礼を言う?」

「え、今のって私を慰めてくれたんじゃないですか?」

「そのつもりはない」

「そうですか。でも私は少なからずあなたの言葉に救われました。だから、ありがとうございます」

 ふいっとライラから顔を背けたところでスヴェンがなにかに気づく。それと同時に部屋がノックされ、スヴェンは素早く立ち上がった。

「失礼します。っとライラさま、よかった。こちらにいらっしゃったんですね、探しましたよ」

 スヴェンの返事と同時に扉が開けられ、顔を覗かせたのはマーシャだった。いつもより切羽詰まった顔をしていたが、中にライラがいたのを確認し普段は細い目がわずかに見開かれる。

「す、すみません。すぐに戻るつもりだったので」

 マーシャに行き先を告げていなかったのを思い出し、ライラは悪いことがバレた子どものように慌てて立ち上がった。しかしマーシャはそれを軽く制す。

「なぜです? ご結婚されたんだからライラさまはこちらでお休みになられるんでしょう?」

「え?」

 さも当然と返された言葉に、ライラの思考は停止して固まる。マーシャはライラからスヴェンに視線を移した。
< 41 / 212 >

この作品をシェア

pagetop